恐竜化石

恐竜絶滅

「博士、やっと完成したんですね」

「ああ、十年かけてやっとできた。……タイムマシン」

「素晴らしいです。誰も作ることができなかったタイムマシンを専門外の地球歴史学者である博士が作ってしまうなんて」

「専門外だからできたのかもしれないな。でも、これで長年の夢が叶う」

 私は地球歴史学者。地球の歴史を研究するのが専門だ。私にはどうしても知りたいことがあった。地球の歴史最大の謎、恐竜絶滅の原因を解明したいのだ。だが、その方法が見つからない。夢は夢のままで終わるのかと思っていた。

 しかし十年前、物理学者がタイムマシンの理論を作り上げたことで事態は変わった。これを完成させれば、恐竜絶滅の謎が解ける。私はすぐにタイムマシンの開発に取りかかった。

「でも、なぜ他の人はタイムマシンを作ることができなかたのでしょうか?」

「無理だと思ってたのだろう。時空をねじ曲げるほどの巨大なエネルギーを制御することが不可能だと」

「本当に巨大なエネルギーらしいですね。核兵器など足元にも及ばないほど」

「ああ、地球上の全核兵器を合わせても、このエネルギーの足元にも及ばない。専門家では恐ろしくて手が出せないのだ。私のような専門外の、怖いもの知らずだからこそ完成できたといってよいだろう」

「早速ですが、行ってみますか?」

「ああ、行ってみよう。恐竜が絶滅した6500万年前に。君も一緒に乗りたまえ」

 私たちは、タイムマシンに乗り込んだ。そして行き先を6500万年前にセットする。いよいよだ。私のライフワークである恐竜絶滅の謎が解明できるのだ。

「じゃあ、行くぞ」

 私は、赤いボタンをゆっくりと押した。これで6500万年前に出発する。

『グィーン、グィーン』

 大きな機械音が響く。まわりの景色がゆがんで見える

 もう少しだ。気持ちを落ち着かせるために目を閉じてその時を待った。しばらくして、ひと際大きな音がした。

『グォーン』

 これで過去の世界に旅立った筈だ。私はゆっくりと眼を開けた。

「…………?」

 まわりを見渡してみる。どう見ても研究室だ。

「どういうことだ?」

 助手と顔を見合わす。私たちが乗っていたタイムマシンは無くなっている。でも私たちがいるのは、見覚えある研究室の中。

「もしかして……、我々をおいてタイムマシンだけが過去に旅立ったのか?」

 この状況は、そう考えるしかなかった。タイムマシンは確かに過去に向かったのだが、乗員を一緒に過去に運ぶことは出来なかったということだ。やはり専門外のため、何か見逃した点があったのだろう。

「博士! いくつか部品も残ってますよ」

 見てみると、タイムマシンを構成していた部品もいくつか残されている。全てが過去に行った訳ではなく、取り残されている部分もあるようだ。

 ねじ曲げた時空の影響範囲に設定ミスがあったのだろう。

「これは……」

 私は、取り残された部品のひとつを手にとって見た。

「エネルギー制御装置」

 強大なエネルギーを制御する部品が取り残されている。これが無ければエネルギーが暴走してしまう。

 しばらくの間、私たちは声を出すこともできなかった。その静寂を破るように助手が話しかけてきた。

「博士、失敗だったようですね。これからどうします? 他の方法で恐竜絶滅の謎を解明しますか?」

 私は宙を見つめたまま、静かに答えた。

「それは、もういい。興味が無くなった……」