男女

疑惑

「まさか、あのアキがケンタと結婚するなんて思わなかったよ」

「ケンタ、うまくやったな。我がサークルのマドンナ、アキをものにするなんて」

大学を卒業して五年、久しぶりにサークルの仲間たちと会った。思ったとおり冷やかされている。

僕と妻のアキとは、このテニスサークルで知り合った。男ばかりのサークルの中で、アキはみんなの憧れの的。その中で、僕なんかを選んでくれるなんて……。

僕の人生は、アキと出会うためだけにあったように思える。アキと結婚することでツキを使いきったのか、他には何もいいことのない人生だ。でも最高に幸せだ。

「ケンタ、お前本当に変わったな。学生時代は、おとなしくて何考えているかわからないところがあったけど……。表情も明るくなったよな」

「この人、最近家で冗談なんか言うのよ」

「この人だって。本当に夫婦しているんだ」

今日は、サークルの同級生十人が全員集まっている。女性はアキひとりだけだ。みんなの視線が僕たちに集まる。本当に楽しい。

しかし、少し気になることが。

「タカヒロ君。今なにしてるの?」

「俺? 俺は商社で働いてるよ。最近は日本に居ることの方が少なくってさ」

やはり変だ。アキとタカヒロ。アキの態度がおかしい。明らかに他のやつと話すときと表情や口調が違う。昔の僕なら気付かなかったかもしれないが、今は違う。最近自分に自信が出てきたせいか、雰囲気を感じ取れるようになったのだ。

結局、途中からはアキとタカヒロのことが気になって、楽しむことができなかった。

家に帰って、アキを問い詰めた。

「おまえ、タカヒロと関係があったんじゃないか! 他のやつと話すときと明らかに態度が違っていたぞ!」

「何言ってるの。そんな訳ないじゃない。なんでタカヒロ君なんかと……」

「そのタカヒロ君って言い方。なんで他のやつは呼び捨てで、タカヒロだけ君付けなんだ? おかしいじゃないか」

「なんでって……。昔からそうだったじゃないの。どうして今になって急に」

「僕は昔の僕じゃないんだ。おかしな態度を示せば気が付くんだ。空気くらい読める」

「私が嘘をついているって言うの? どうして……。どうして信じてくれないの? タカヒロ君とは何でもないって言ってるじゃないの」

アキの眼から涙がこぼれた。言い過ぎたかもしれない。

「タカヒロとは本当に何もなかったんだな」

「だからそう言っているじゃない。タカヒロ君とは本当に何もなかったって」

アキの顔を凝視したが嘘をついている表情ではない。本当のことを言っている。

僕の勘違いだ。雰囲気を読み取れるようになっただなんて、自分で勝手に思い込んでいただけだ。それに、もし何かあったとしても過去の事じゃないか。

「アキ。ごめん。言い過ぎた。君を信じるよ」

「うん。私こそ疑われるような態度をとってごめんなさい……」
僕たちは、そのまま抱き合った。

次の日、アキは大学時代の友達と電話で話していた。

『本当あせったわよ。あの鈍感な男が急にあんなこと言い出すなんて。タカヒロ君のときだけ態度が違う? そりゃそうよね。タカヒロ君だけだもの。関係が無かったのは……』