ちょこっとのヒマツブシ/ショートショート略して「ちょこヒマ」

ユーモアショートショートはいかがですか?過去作品のリライトから新作まで色とりどりのショートストーリーをお届けします。

ショートショートストーリー『ブラックホール』

time 2015/12/17

ショートショートストーリー『ブラックホール』

ブラックホール

 俺はエックス星の自宅で、ショーンが来るのを待っていた。ショーンは、俺の幼なじみ。今は遠く離れたゼット星に住んでいるため、長い間会っていない。そのショーンが久しぶりにうちに遊びに来るのだ。

「ピンポン」

 呼び鈴が鳴った。ショーンが来たのだろう。予定通りの時間だ。俺は玄関を開けた。しかし、そこにいたのはショーンではなかった。

「宇宙警察のものですが」

 訪問者はそう言って、ポケットからホログラムカードを取り出した。警察の人間であることを示す証明書のようなものだ。

「ショーンさんをご存じですね」

「はい、幼なじみです。今日、ここに来ることになっています」

「そのショーンさんが…………亡くなられました」

 俺は一瞬、その言葉の意味を理解することができなかった。ショーンが死んだ――そういう意味だと気付くまでにかなりの時間を要した。

「ショーンが、どうして……」

「ブラックホールに吸い込まれたそうです。目撃者の話では、自らブラックホールに突っ込んでいったと」

「自ら……自殺ということですか?」

「そう考えています」

「そんな筈ありません。ショーンは自殺などするような人間ではありません」

 ショーンは、おとなしくてシャイな奴だ。そのショーンが自殺するなんて想像もできない。

「ショーンさんと最後に連絡を取られたのは、何時ですか?」

「五十宇宙時間ほど前です。ショーンが宇宙船から三次元映像通信を送ってきました」

「五十宇宙時間前……。ブラックホールに突っ込む寸前ですね。そのとき、どんな話をされましたか?」

「ショーンは、こちらに向かっている途中でした。今、第三銀河を横切っているところなので、後五十宇宙時間くらいで着くだろうと言ってました」

「そのとき、変わった様子はありませんでしたか?」

「いえ、普段通りでした。とても自殺をするような様子はありませんでした」

「他にどのようなお話しをされたのですか?」

「ショーンはシャイで口数の少ない男ですから、あまり話はしていません。後は……土産物の話くらいでしょうか」

「土産ですか?」

「ショーンは最近ゼット星で流行っている果物を土産に持ってくると言ってました。でも、その果物とはビービーフルーツのことだったのです」

「ビービーフルーツですか」

「はい。ショーンは知らなかったようです。ビービーフルーツの原産が、このエックス星だってことを。ここでは、珍しくもない果物だぞって言うと、あいつは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしました」

「それから?」

「いえ、それだけです。あいつはとんでもなく恥ずかしがり屋なので、そういう失敗をした後は恥ずかしくて何も言えなくなりますので」

「でも、それが自殺の理由だとは思えませんよね」

「はい。いくらシャイだと言っても、その程度で自殺する筈はありません」

「そのときの会話は、本当にそれだけですか?」

「はい、他には何も。……あ! そう言えば最後に何かぽつりと言ってました」

「何と言われたのですか?」

「確か、……『こんなミスをして本当に恥ずかしい。――穴があったら入りたい』と……」

あとがき
2006年4月発表の作品です。好きな話なのですが、最近読んだ電子書籍に同じオチの話が載っていたのでお蔵入りにしようかと思ってました。とりあえず、このサイト内だけでの公開とします。
 

down

コメントする




プロフィール

真坂まえぞう

真坂まえぞう

さすらいのショートショート書きです。 [詳細]

ちょこっとのヒマツブシ

お奨めショートショート

恐竜絶滅
恐竜絶滅の原因を知るためにタイムマシンを作った地球歴史学者が……
アダムとイブ
神が、人類を一度滅ぼし、新しいアダムとイブを選んで一からやり直すことに決め……
名前
人の名前を覚えることが苦手な女性が……

お詫び

病気のため長らく放置しておりました。ドメイン一旦失効してしまい、皆様には本当にご迷惑をおかけしました。心からお詫び申し上げます。 何とか一年半ぶりに再開することができました。今後ともよろしくお願いいたします。

最近のコメント