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ショートショートストーリー『対人オーラ』

time 2015/12/16

ショートショートストーリー『対人オーラ』

【最初の相談】

「妻の体のまわりに白いモヤのようなものが見えるのです。一体何なのか……」

「他の人のまわりにもモヤが見えますか?」

「いいえ、妻だけです」

「あなたは、奥さんのことを本当に愛してらっしゃるのですね」

「はい」

「それは、対人オーラです。オーラをご存じですか? 人のまわりに見えるエネルギー体です」 「聞いたことはあります。では、妻のまわりのオーラが見えていると……」

「普通のオーラではありません。普通はオーラを見ることができる人は、全ての人のオーラが見えるものです。あなたには奥さんのオーラしか見えない」

「そうです」

「それは対人オーラと言うものです。心の底から人を愛すると、その人の対人オーラが見えるようになるのです。そのオーラの色は、その人の自分に対する気持を表しているのです」

「……」

「あなたの場合、奥さんの白い対人オーラが見えている。この白は、奥さんのあなたに対する気持を示しているのです。失礼ですが、ご結婚されてどのくらいですか?」

「結婚したばかりです」

「そうでしょうね。ウエディングドレスが何故純白なのか、ご存じですか?」

「何色にも染まっていないということでしょうか?」

「そう、あなたの色に染まります。そういう意味で結婚式で白い衣装を着るのです。対人オーラの白も同じ意味です」

「そうなんですか」

「昔の人は、対人オーラを知っていたのでしょうね。白い対人オーラを真似て白いウエディングドレスを着るようになったというのが本当だと思います。何も心配することはありません。あなたは奥さんを愛しているからこそ、対人オーラが見える。そしてその色は理想的な花嫁の色なのですから」

「わかりました。ありがとうございます」

 

【二度目の相談】

「妻のまわりに見えていた対人オーラが、だんだん赤くなっているのですが。これはどういう事でしょう」

「赤……ですか」

「はい。最初は一部だけ赤い部分があったのです。それが少しずつ赤い部分が増えていって、今では縞模様みたいなのです。赤、白、赤、白という具合に」

「それは、奥さんのあなたに対する感情が変化してきているのです」

「変化ですか」

「白は、理想的な新婦の気持ちを表す色です。しかしそれだけでは結婚生活は送れません。時間とともに少しずつ気持が変化するのは当たり前のことなのです」

「それでは、赤にはどのような意味があるのでしょうか?」

「それが……実は、分からないのです。赤い対人オーラというのは、私も始めて聞きました」

「私のことを嫌いになっているとか」

「いえ、嫌いになると対人オーラは黒くなります。ですから、そういう心配はないと思います」

「では、妻は一体どのような気持でいるでしょうか」

「赤い対人オーラというのは始めて聞きましたが、推測することはできます。以前にも言ったと思いますが、昔の人は対人オーラを知っていたのです。昔の人が、赤という色にどのような意味合いを持たせたのかを考えれば、それが赤い対人オーラが表す意味になると思います」

「赤……、赤と言えば危険信号。やはり夫婦生活に危険信号が点っているのでしょうか?」

「そうとは限りません。赤は情熱の色とも言います。奥さんの愛情が激しくなっているのかもしれません。それに、良く言うでしょう。運命の赤い糸と」

「そうでしょうか?」

「赤が危険信号というイメージが定着したのは、まさしく信号によるものです。止まれの印に目立つ赤を使った、それが始まりです。昔の人が使っていた表現ではありません」

「だといいんですが」

「でも、断定はできません。すみません。あまりお役にたてなくて」

「いえ、参考になりました。ありがとうございます」

 

【最後の相談】

「妻のまわりの対人オーラが、完全に赤くなりました。もう白い部分は残っていません」

「それで、奥さんの様子はどうですか?」

「それが……」

「どうされました?」

「別れてくれと言われました。離婚届を出されて。やっぱり妻は私のことが嫌いになったのです」

「おかしいですね。嫌いになると対人オーラは黒くなる筈ですが」

「でも、本当に別れてくれと言われたのです。一体、赤にはどんな意味が……」

「嫌いではない。でも別れたい。好きでも嫌いでもないけど一緒にいる気はないってことでしょうか?」

「それって、もしかしたら好き嫌いの感情すら抱けないどうでもいい相手だということですか? それなら嫌われた方がまだましですよ」

「別にそう言った訳ではありません。嫌いでもないのに別れる理由を少し想像してみただけです。赤い色を使った表現が何かあれば手がかりになるですが」

「そうですね。考えてみれば一度は愛して結婚した相手です。さすがに、好き嫌いどころかどうでもいいなんて思うはずがありませんよね」

「そうですね」

「赤の他人じゃあるまいし……」

あとがき
 2006年1月発表の「赤白」という作品を改題しました。超短編小説会さんの同タイトル企画で「赤白」というタイトルで話を創るという企画に参加したものです。もう同タイトル企画は関係ないので、相応しいタイトルに変更しました。でも「赤白」のお題で何故こんな話になったのか、自分でも不思議です。
 

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真坂まえぞう

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