ちょこっとのヒマツブシ/ショートショート略して「ちょこヒマ」

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ショートショートストーリー『酒飲み父さん』

time 2015/12/15

ショートショートストーリー『酒飲み父さん』

酒飲み父さん

 山に登る途中、道ばたにぽつんと座っている男の子に出会った。こんな山奥に子供がいることを不思議に思い、つい声をかけた。

「ねえ、君こんなところで何しているの?」
「お父さんを待ってるんだ」
「君のお父さんって何してるの?」
「うーん、いつもお酒を飲んでる」
「あ、そうじゃなくて今何してるの?」
「今もお酒を飲んでるよ」
「え? こんな昼間から?」
「いつも昼間から飲んでるよ」
「いつもって……。今どこにいるの?」
「あっち」
 そう言って、男の子は山の上の方を指さした。
「山の上で飲んでるの?」
「うん。お父さんは、いつもお酒の瓶を腰にぶら下げてるんだ。それに直接口をつけて飲むんだよ」
 何てだらしない親なんだ。子供をこんなところに待たして、酒を飲むなんて。俺は怒りを感じ始めていた。男の子は更にしゃべり続けた。
「お父さんは、お酒を飲むだけじゃなく人を殴ったり、蹴ったりするんだよ」
 酒を飲んで暴力をふるうなんて最低の人間だ。俺はちょうどあの山の上に行く予定だ。この子の父親に会って懲らしめてやろう。

「お兄さんは、今から山の上に行くんだ。君のお父さんに会って、お酒を飲むのを止めさせてあげよう。大丈夫、お兄さんは強いんだから」
「でも、多分お父さんの方が強いよ。今まで負けたことがないんだって。僕も将来、お父さんみたいになりたいんだ」
 お父さんみたいになりたいって……。父親を嫌っているんじゃないのか。昼間から酒を飲んで人に暴力をふるうような父親を。どういうことだろう。悩んでいると男の子が俺に訊ねてきた。
「お兄さん、何しに山の上に行くの?」
「修行だよ。あの山の上に、有名な拳法の師匠がいるって聞いたんでね。何しろあの幻の酔拳の師匠らしくて……」

あとがき
 電子書籍”ショートショートアンソロジー「モザイク」”に掲載した作品です。軽く読める話を載せたかったのでこの話を選びました。でも、他の作品のレベルが高すぎて完全に埋もれてしまいました。もう少しくせのある作品で存在感を出した方が良かったかなとちょっぴり後悔しています。
 

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