ちょこっとのヒマツブシ/ショートショート略して「ちょこヒマ」

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ショートショートストーリー『皿廻し』

time 2015/12/15

ショートショートストーリー『皿廻し』

皿廻し

 

「お母さん! ユウトが入ったわよ!」

 娘が叫んだ。息子のユウトは、大道芸人だ。子供の頃から曲芸の練習に熱心に取り組んでいたのだが、練習に集中しすぎると周りが見えなくなることがある。その状態を私たちは『入った』と表現している。

「早く、片付けて!」

今、ユウトが練習しているのは皿回しだ。回転力が落ちないよう、先のとがった硬い棒で器用に皿を回す。『入った』状態のユウトは、目に付いた皿、いや皿状のものを全て回そうとする。もう誰にも止められない。
 元の状態に戻るまで数時間はかかる。それまで部屋から皿状のものを運び出し、隠しておかなければならない。そうしなければ、ユウトは皿状のもの全てを引っ張り出し、手当り次第練習台にしてしまう。

 娘とふたりで、部屋中の皿、灰皿、丸い蓋など、皿状のものを運び出す。

「これで全部?」

「えーと、あ! お母さん! あのお皿!」

 娘の声で気がついた。大事な皿がない。旦那が気に入って買った有名な陶芸家の作品だ。あれを皿回しの練習に使われて、割られたりしては大変だ。

 私はもう一度部屋に入った。室内は、ものが散乱しめちゃくちゃな状態になっている。ユウトは相変わらず『入った』まま、皿を探している。早くあの皿を見つけて運びださないと……。

「どこにあるの?」

 あまりに部屋が荒れているために、皿が見つからない。早く、早く……。気持ちがあせる。
 あせればあせるほど、見つからない。でも諦める訳にはいかない。とにかく部屋中をくまなく探した。目が皿になるほど……。

  そのとき、目の前に細い棒の先端が……。

あとがき
 実はこんなバカバカしい話が好きです。「しょーもねぇ話だなぁ」と鼻で笑ってやって下さい。それが褒め言葉です。単なる自己満足ですが。
 

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真坂まえぞう

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病気のため長らく放置しておりました。ドメイン一旦失効してしまい、皆様には本当にご迷惑をおかけしました。心からお詫び申し上げます。 何とか一年半ぶりに再開することができました。今後ともよろしくお願いいたします。

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