ちょこっとのヒマツブシ/ショートショート略して「ちょこヒマ」

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ショートショートストーリー「龍の球」

time 2015/12/23

ショートショートストーリー「龍の球」

龍の球

 

「反応が強い。もう少しだ」

 手にしたレーダーの中心近くで光が点滅している。思えば長い道のりだった。それも、もうすぐ終わる。

「あの公園だ」

 人の少ないひっそりとした小さな公園。5歳くらいの男の子がひとりで遊んでいるだけだ。
 俺は、レーダーの反応を見ながら公園の中を歩いた。そして、反応の強い場所を見つけた。公園内に一本だけ生えている銀杏の木の根もとだ。

「よし、ここだ! これで七個全て揃う」

 俺のリュックの中には伝説の龍の球が六個入っている。この龍の球を七つ集めると、龍が現れてどんな願いでも叶えてくれる。最後のひとつが、もう少しで手に入る。

 俺はスコップを取り出し、木の根もとを掘り始めた。
 すると、さっきから遊んでいた男の子が、俺の方に近づいてきた。

「おっさん、何やってんだ?」

 俺はまだ二一歳だ。それをおっさんだと? 思わず睨みつけたが、その子は全く動じずへらへら笑っている。

「おっさん、一緒に遊ぼうぜ!」

 タメ口、いや子分に対する命令口調。このガキ一体どんな教育を受けてきたんだ?

「うるさい! どっか行け!」

こんなガキに気を使う必要はない。思い切りドスの効いた声で追い払おうとした。

「かくれんぼしようぜ。おっちゃん、鬼な」

なんてガキだ。大人の本気の恫喝を完全無視するとは。
まあいい。かくれんぼなら好都合だ。ガキが隠れている間に、ことを済まそう。

「わかったよ。かくれんぼしてやるよ」

そう言って木の方を向き、腕を額に当てて目を閉じる。

「いーち、にー、さーん……」

適当に数を数えた後、目を開けてあたりを見回す。ガキの姿はない。

 上手くいった。穴掘りを再開する。
 カチッ、スコップに手応えがあった。周囲の土を手で掘り進め、龍の球を取り出した。
 これで、七つ全てが揃った。

 すると上空に大きな龍が現れ、空全体が振動するかのような声が響いた。

「おまえの願いをひとつだけ叶えてやろう。何が望みだ?」

 きた! 願いを叶えてくれる伝説の龍。あまりの迫力に圧倒され、上空を見上げたまましばらく呆然としていた。

ばちん!

太ももに痛みが走る。

「おい、おっさん! 何してんだ? 早く探しに来いよ!」

さっきのガキが、俺を蹴りやがったのだ。怒りが込み上げたが、何とか冷静さを取り戻す。確認しないといけないことがある。

「おい、空に何か見えるか?」

「雲が見える。当たり前だろ」

 その言葉を聞いて安心した。龍の姿は俺にしか見えない。この様子なら龍の声も聞こえていないはずだ。

七つの球を集めた者だけが、龍の姿を見ることができ、声を聞けて、願いを言える。いい伝え通りだ。

ガキなんか無視して願いを言えばいい。世界一の金持ちになりたい、それが俺の願いだ。しかし実際に夢が叶うとなると、欲が出てきた。金だけではなく名誉や権力まで欲しい。何と言おう?

「おっちゃん、バカみたいに何見てんだよ」

 ガキが泥まみれの手で俺の服を引張る。汚ねえ、そう思ったが無視だ。とにかく願いごとを考える。ひとつの願いで金も名誉も権力も全て手に入れることができないものか? 頭の中をフル回転させる。

「カンチョー!」

 ガキの声とともに、臀部に突き刺すような痛みが走った。

「このやろう! 何しやがる! ぶん殴るぞ、くそガキ!」

 思わず大声で叫ぶ。こんな大事なときに何をしやがる。

「おっさんが遊んでくれないからお仕置きだ!」

 このガキを何とかしないと、落ち着いて願いを考えることなどできない。

「俺はおまえと遊ぶつもりなんかない。早くどこか行かないと本当にぶん殴る。もし俺が本気で殴ると怪我では済まないぞ。さっきも、ひとり殴り殺したばかりだ。どうせ殺人犯だ。ひとり殺すもふたり殺すも同じことだ」

ゆっくりと諭すような口調で言った。恫喝が効かない相手には、この方が効果がある。もちろんデマカセだが、ガキの表情が明らかに変わった。

「死にたくなかったら、早くどこかに行った方がいいぞ」

「ふん」

 ガキは軽く鼻をならした後、俺の方を向いたまま少しずつ離れていった。

「おっさん、本当に馬鹿だな。そんなこと信じる奴いねえよ。でも今から警察に行ってくる。警官が来ておっさんが困るとこ見たいからな」

 なんてガキだ。表情が変わったのは、そんなことを思いついたからだったのか。

「おい、アホなおっさん。そこでちゃんと待ってろよ。どんなことになるか見てみたいからな」

 ガキは憎たらしい顔で俺を指差してそう言い放ち、走って公園を出ていった。
 俺は思わず呟いた。

「なんてガキだ。今どきあんな悪ガキがいるとは……親の顔が見てみたいものだ」

 そのとき、空から声が聞こえた。

「分かった。お前の願い叶えてやろう」

あとガキ
もちろん、あれがモチーフです。まあ、「双子の兄弟」とは違い、元ネタを知らなくても成立する話にはなっています。と言っても元ネタを知らない人なんていないでしょうね。

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