ちょこっとのヒマツブシ/ショートショート略して「ちょこヒマ」

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ショートショートストーリー「てst」

time 2016/01/05

ショートショートストーリー「てst」

この話は、超短編小説会さんの同タイトル企画参加作品です。「てst」というタイトルで話を創るというチャレンジに挑戦しました。

てst

 俺のコードネームは「てst」、スズキタケオ博士に作られたサイボーグだ。俺は昔、大事故で重症を負った。絶対に助からないと医者にも見離された。その俺をスズキ博士がサイボーグとして蘇らせてくれたのだ。そのときから人間だった頃の名前は捨てた。サイボーグ「てst」として新たな人生を送ることにしたのだ。

「てst」のstは、スズキタケオ博士のイニシャルだ。スズキ博士によって作られたサイボーグであることを示す。そして、その前の「て」が個体を識別するための文字だ。つまり「てst」とは、スズキ博士によって作られた番号「て」のサイボーグという意味だ。この識別文字は、ひらがな一字と決まっており、コンピューターによりランダムに決められる。

「でも、不思議だ。識別文字はランダムに選ばれているはずなのに、何らかの意図を感じる。それぞれのサイボーグの特徴と妙に符合している」

 いつだったか、博士がこんなことを言ったことがある。俺もこのことが気になっていたのだ。博士が一番初めに作ったサイボーグが俺だ。試験的に作られた俺が「てst(テスト)」という名前。まだこの時点ではただの偶然と思っていた。しかし、次に作られたイケメンの元ホストの識別文字が「ほ」、つまりそのままずばりの「ほst」だったのだ。その次の胸の大きい女性が「ば」、そして郵便局員は「ぽ」だった。コンピューターがランダムに選んだとは思えないほどそれぞれの特徴を現している。
 その後もこの現象が続いた。博士が自分の最高傑作だと言ったサイボーグは「べ」、最もお金がかかったサイボーグが「こ」、これはもう偶然とは言えない。コンピューターが俺たちをからかっているようだ。ランダムに選ぶようプログラムしているはずなのに……。

 俺は久しぶりに博士の研究所を訪れた。ちょうど、新しいサイボーグが完成したところだった。

「博士、このサイボーグの識別文字はどうなるのでしょうね」

「私にも分からないよ。実は今回のサイボーグ、何の特徴もないのだ。もしコンピューターが何らかの意思をもって決めているとすれば困るはずだよ。これほど平凡なサイボーグはないからな」

「それに、stの前に一文字つけて意味のある言葉になるような文字は、もうないのではないですか。これで博士の作った十番目のサイボーグですし」

「そうだな。それに私はまだまだサイボーグを作るつもりだ。最早助かる見込みのない人間をサイボーグとして蘇らせることが私の生きがいだからな。そのうちコンピューターもネタが尽きるだろう」

「そうですね」

「よし、そろそろコンピューターが選んだ識別文字がモニターに……。う……。」

 いきなり、博士が胸をおさえて倒れた。顔が真っ青だ。ただ事ではない。

「博士! どうしたんですか博士。大丈夫ですか」

 俺が博士を抱き起こそうとしたとき、モニターにひとつのひらがなが映し出された。

「こ、これは……」

 モニターに大きく映し出された文字、それは「ら」だった。

 

あとがき
 一体、「てst」という言葉にどんな意味を持たせばいいんだ? と苦労したことを思いだします。一か月近く悩みました。

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